ソメイヨシノのDNA Part2

まずコレを読む事。
 
そう、染井吉野の遺伝子は全て同じなんです。
何故同じ樹に咲いた花の雄しべの花粉を雌しべに付けても実を結ばないという性質を持っているのか。
それは同じ遺伝子同士の結合を避けるための自然の知恵なんですね。
故に、オオシマザクラエドヒガンの交配で一本だけ作られた最初の染井吉野から実を作らせ、種を取ることは不可能だったんですよ。
その結果、挿し木や接ぎ木という方法で全国に普及していったのです。
ときに実ができることがあります。
ですがそれはエドヒガンやオオシマザクラとたまたま交配してできたもので、その種から染井吉野が育つことはないんです。
 
全てが同じ遺伝子だったため、気候や土壌などの環境が揃えば同時期に開花し、花見には絶好の樹木になった訳です。
ですから、遺伝子の異なる樹木同士で交配を重ねながら、強い遺伝子が残るという自然界では当たり前の環境適合を行っていないため、染井吉野は、害虫や病気に極めて弱いのです。
 
 
 
ということは・・・
ここからです。
 
 
 
そう、染井吉野が全く同一の遺伝子でクローンであるということは、日本列島全体で同じ性質の個体が無数に存在することになります。
自分と同じ人間が無数にいるということですよ!?
実は、世界的に見ても、これほど広範囲にクローン植物が分布している例はないのです。
この「同じ個体が至るところに存在する」ことによって、染井吉野は意外なことに利用できることに。
それは開花や満開などの現象を通して、その土地の気候や風土を推し量ることができるということです。
桜の時期に良く耳にする桜前線、「開花」という姿でその土地の平均気温が「春」となったことを示してたものです。
同じ時期に花をつけるというこの性質を利用し、海外に植えた染井吉野からその土地が日本の「春」にあたる時期がいつなのかを知る重要な手がかりとなる訳です。
ワシントンのポトマック川河畔、リトアニアの旧首都・カウナスなどに植えられているそうです。
もちろんこれも同じ遺伝子。
 
一見艶やかで煌びやかな桜の木も、人間に作られた人工植物でありあまつさえ自生さえ出来ない。
花を付け、実を結び、種がこぼれ新しい生命が芽を出す。
唯一出来ない事が、そんな当たり前とも思える事なんです。
花見という目的のために造られた、ジツに数奇な運命で生まれた染井吉野
人の手がなければいずれ無くなってしまうかも知れない。
いや、人の手がなければ確実に無くなってしまうんです。
時期外れではありますが、冬枯れ手前のこの季節にふとこの話を思い出して染井吉野を見上げてみては如何でしょうか。
その染井吉野も必ず人の手で植えられたものです。
桜よりも梅の方が粋で好きだと以前書きましたが、こうして染井吉野を改めて見てみると満更でもない自分に気が付いた今日でした。
 
かずあき