こんな御話 Part1

とある親方の話。
ってか親父の話。
オレがまだ小学生だった頃の話だそうです。
その頃親父の下には2人の若衆が居たそうな。
その2人の若衆を連れて現場に行った時の話です。
 
その日3人は手入れをしていた。
「庭師さぁん!お昼にしてくださぁい!」
そのお宅は手作りのお昼を振舞ってくれる親切なお宅。
そこの若奥さんが声をかけてきた。
 
親父「あいよ〜。おい、メシにすっか」
 
若衆A「はい」
 
若衆B「はい」
 
その日のメニューはチャーハン。
 
若衆B「あぁ、チャーハンかぁ・・・」
 
そう、若衆Bはとても好き嫌いが多いんです。
かなりの偏食家。何せ「何が入っているか分からない」という理由で肉まんも喰えない始末。
しかし職人は出されたものは残してはいけないんです。
それが出来ないなら最悪持って帰る。
それが職人としての礼儀なんです。
親方に怒られるんです。
オレも現場でデッカイ梅干を出されてこっそり持って帰った事もありました。
しかししかし。
今日の相手はそう、チャーハン。
しかも超大盛り。
持って帰れないんですよ。
あぁ、可哀相。
 
若衆A「我慢して喰っちまえよ」
 
若衆B「いや、無理。絶対」
 
むしろダメ、絶対。
 
若衆B「どうしましょう、親方」
 
親方「どうしましょうってお前・・・」
 
親方「しょうがねぇ、捨てちまえ。縁の下に」
 
そう、その頃の家は縁の下の通気口に網が張ってない家があった。
幸運にも通気口は空いている。
バレずにやるにはここしかない。
意を決してチャーハンを手に取る。
丁度若奥さんは奥にお茶を取りに行ってこっちは見えない。
今だ!!
サッと縁の下にチャーハンを放り込む。
 
 
 
 

あ。(若衆B)
 
 
 
 
 
若衆A「・・・・・!!」
 
若衆B「お、親方・・・」
 
親方「ナンダヨうるせぇな。サッサと済ましちめぇよ!」
 
若衆B「い、いや・・・親方・・・あの、器が・・・」
 
 
 
 
器!?
 
 
 
見れば若衆Bの手には何もない。
 
親方「!!」
 
若衆B「チャーハンと一緒に行っちゃいました・・・」
 
縁の下にはチャーハン。
 
 
と、器。
 
 
若衆B「どうしましょう、親方・・・」
 
親方「どうしましょうってお前・・・」
 
3者協議の結果。
スットボケ大作戦決行!!
 
お昼の時間も終わり、1時。
 
親方「じゃ、奥さんご馳走様でした」
 
若奥「いえ、お粗末様でした」
 
若衆A B「・・・・・・・・」
 
若奥「?あれっ?」
 
若衆A B「!!」
 
若奥「あの・・・器はぁ・・・」
 
親方「あぁ、食べちまったんだよ」
 
 
 
たべちゃったの!?
 
 
謎は今も闇の中・・・。
もとい、縁の下・・・。
いろいろありますよ、現場は。
 
かずあき