根回し。

この「根回し」という言葉。
この語源は植木屋にあるそうだ。
 
通常、植木の移植は根っこをある程度の大きさで丸く掘り、麻布などで巻いて土が落ちないようにして移動する。
以前は菰(こも)と呼ばれる藁を編んで布状にしたものを使っていた。
それを固定する縄も今では麻縄を使うが、以前は藁の荒縄を使っていた。
麻の製品はロール状になっていて、どちらも今では麻が主流。
ある程度の大きさで丸く掘るというのも、教科書には幹周りの3倍などと書いてあるが、それでは正直デカすぎる。
時期や木の勢いと特性、運搬の手段や距離などを考慮してギリギリまで小さく掘る。
そこで植木屋の腕が試される。
いくら小さく掘り上げたところで、移植先で枯れてしまったのでは意味が無い。
かといって大きすぎても後の作業の支障になる。
その辺の勘所はやはり経験。
植木の種類や時期によっては土を残らず叩いてしまった方が付きの良い場合もある。
コツとして、根っこを切るのを恐がって切らないよりは、「自分の植木だ」と思って思い切りやってしまった方が良い。
と、思う(笑)
「オイ!これ読んでやったら枯れたぞ!」っていうコメントは受け付けませんので、あしからず(笑)
切るときも、切り口はあくまで綺麗に。
小さい根っこは鋏で。
太いものは鋸(のこぎり)で。
猿臂(えんぴ)やスコップでグチャグチャに切りっぱなしたのでは、そこから根腐れしてしまうので。(←正確には「猿臂」ではなく「円匙」。訂正の日記は4月15日の日記で。すみませんでした)
比較的付きの良い植木を職人がサクっと掘って植えてしまうのは、常に猿臂やスコップの先を砥いで刃物のように手入れしているから。
幾本もある移植の作業の最中、いちいち鋏や鋸を出す手間を省くため。
といっても、太いものや柔らかい根っこはしっかり鋏や鋸を使います。
根っこの切り口が綺麗なら、春先にそこから細かい根っこが出てくる。
その細かい根っこが重要で、それが水分を吸い上げてくれる。
そういう意味で、根っこは恐がらずに切るべし。
切り口は綺麗にするべし。
と、教わる訳です。
これが移植。
大概の植木は、掘って根巻きをして植える事が出来る。
しかし大木となると、少し勝手が違ってくる。
樹齢が3桁などの老木になってくると、根っこを小さくすることができない。
何故なら、何十年何百年と同じ所にいる植木は根っこがみな太い。
太いゴボウのような根っこばかり。
樹木というのは、上の枝を支えるだけの根っこが地中には生えている。
つまり、枝と同じくらい根っこが張っていると思っていだたきだい。
なので巨木となるとそれくらい広く根っこが張っている。
運搬を考えると、植木のために最も良い根っこの大きさでは運べない。
すぐには小さくできない。
そこで「根回し」という作業をしておく。
やはり時期は春先が望ましい。
普通根っこを掘る場合、上から見て丸く掘る(文章力が無くてすみません・笑)
その根っこの丸半分を掘り、比較的太いものを切らずに皮を剥く。15センチくらい。
つまり西側とか東側とか。
これを環状剥皮といいます。
そして埋め戻す。
するとそこから小さな根っこが出てくる。
翌年にはその反対側を掘り、やはり太い根っこの皮を剥ぎ、細かい根っこがでるのを待つ。
そしてその翌年に初めて移植という作業に入れる。
というように、巨木の移植には何年かかけて行う事があります。
この作業を「根回し」といいます。
「根回し」とは関係者に意図や事情を説明してある程度の了解を得ておくこと。段取り。
植木に、
「近いうちお前さんを移植したいんだが、よろしいかね?」
と、了解を得るわけですね。
この「根回し」という言葉が一般化されたのは昭和40年代半ばだそうで。
広く使われだしたのは意外と最近なんだなぁと思ったので、取り上げてみた。
何事も、職人仕事は「段取り八分」。
段取りがうまく出来ていれば、その分仕事もスムーズに進む。
みなさんも、仕事の際は「根回し」してから。
いや、悪巧みではないですよ(笑)
 
日々精進。
 
かずあき