職人の手。

昔、自分の両の手が厭だった。
藁で編んだ荒縄を触ってガサガサに荒れて、そこに松ヤニが入り込み真っ黒なすじになる。
松ヤニは少し洗った程度では全く落ちない。
激しくこすればアカギレになり、そこが腫れて汚れる。
トカゲのようなガサガサした汚い手になっていく。
それだけでなく、黒く色の付いたシュロ縄は色落ちして手も荒れる。
トゲがある木を剪定すればアカギレした傷口に刺さり、化膿する。
そして両の手はどんどん無骨に腫れあがっていく。
鋏による傷は4ヶ所。縫い傷もある。
それが厭だった。
以外に、どんな場面でも手は目に付く。
 
「それ取って。」
 
「その指輪ってさぁ・・」
 
「手づかみでいいよね?」
 
「Fコードってどうやって押さえるんだっけ?」
 
「手の綺麗な人っていいよね?」
 
その度に自分の両手を隠していた。
コンプレックスになっていた。
それでも不思議と仕事を変えようとは思わなかった。
今でもそれは不思議でしょうがない。
無骨に腫れあがる両の手と、葛藤していた。
 
そんなある日。
唐突に言われた。
「手を隠すキサンは馬鹿だ。」
ビックリした。
面と向かって手のことを言われたのは初めてだった。
同じかずあきという名前の先輩。
その人は九州男児
普通、云えないような、云わないような事を平気で口にする人。
何せその人は、接待ゴルフの席で、
「あんたが№2の人かい?」
と平気で聞いたらしい(笑)
地元でもかなり暴れていたと、友人の方から聞いた。
とても面白い人(笑)
曰く、
「己の仕事と努力と悪さを一番良く知っているのはその両手だ。」
曰く、
「辛い仕事、隠れた努力、喧嘩で人を殴った痛み、全部知っている。」
こんな台詞は小説の中でしかありえないと思う(笑)
しかし先輩はいたって真顔だった。
思わず自分の掌を見る。
拳を握る。
「手を隠すキサンは馬鹿だ。」
救われた。
少し大げさだ(笑)
しかしその時は本当にそう思った。
報われたのだと今は思う。
手を見れば分かるとも云っていた。
手を褒められたのは初めてだった。
その日からだ、自分の両の手を隠さなくなったのは。
寧ろ無骨に腫れあがっていく手を、今では幾つもの指輪が所狭しと並んでいる。
数にして6つ(笑)
あまつさえブレスまでしている。
肩身の狭い思いをしていた自分の両手。
今では負けない位の無骨なスカルリングなどが並び、主張さえしている。
無様に腫れて小汚い掌。
節くれだった指。
空手と喧嘩で作った拳。
冬の寒さにも、鋏の傷にも負けない最高の相棒です(笑)
そして、職人の手だと言ってくれた先輩に感謝。
 
などと、
 
馬鹿者だった頃の、
 
もとい(笑)、
 
若者だった頃の、
 
思い出を、
 
格好をつけて、
 
書いてみたりする(笑)
 
職人の手で(爆)
 
日々精進(笑)
 
最後まで笑いっぱなし。
かずあき