免疫力。

慣れるとは恐ろしいもんで、体にまで変化をあたえる。
植木屋になりたての頃、春先からは地獄だった。
最近の庭持ちは、年に1回の手入れが主流。
植木屋の我侭を言わせてもらえるのなら、年に2回。
しかしながらこの景気。
やはり年に1回でも手入れをする庭ってのも実は贅沢なのかもしれない。
そうなると1年ぶりに赴く庭はやはりボッサボサ。
風の通りの悪い庭には当然のように虫が寄る。
しかも大勢で居る。
毎年消毒をしている庭なら違うが、やはり風通しってのは大切。
そんな植木達を手入れするのはつらかった。
毛虫が居ると分かっているのに手を入れる。
酷い庭では、家の壁にまでついている。
更に言うと、葉が全く無い植木なんかもあったりする。
そんな日の現場あがりは凄い。
上着を脱ぐと毛虫。
ズボンを脱いでも毛虫。
部屋に帰ると毛虫が横切る。
これが刺されると大変。
カユイなんてもんじゃない。
掻いてしまうと傷になる。だから掻けない。
これは地獄。
まだ骨でも折れて痛いほうがよっぽどいい。
見た目も酷い。
しかも奴等が刺すのは首やら腿やらと柔らかいところばかり。
毎日眠れなかったのをよく覚えている。
しかし毎年毎年刺されていると、免疫ができるらしい。
最近では毛虫が居てもかゆくならない。
首筋からでてきても平気。
きっと刺されていると思う。
なんたって奴等は全身毛だらけなのだから。
だからといって摘んだりはしないが。
しかし例外が1種。
チャドクガの幼虫、チャドクムシ。
何年か前、大量発生したとニュースでやっていた。
これはたぶん免疫とかいうレベルでない。
チャドクガというくらいで、主にお茶の葉、椿、山茶花(さざんか)に居る。
しかも綺麗にならんでいる。
これに刺されると腫れるし何よりカユイ。
本当にカユイ。
お茶の木や椿、山茶花などは要注意。
よく公園なんかに植わっているが、あれは危ないんじゃないかと思う。
公園というといつもよく管理されている印象だが、そうでもないところだって少なくない。
あれは気をつけたほうがいい。
もし毛虫に刺されてしまったときは、むやみに掻いてはいけない。
洗ってもだめ。
泡に毛が残っているので、被害が拡大する。
まず、刺されたと思ったらガムテープなどで患部に刺さった目に見えない毛を取り除く。
それからよく洗って薬を塗る。
それでも治らないときなどは皮膚科に行きましょう。
よく効く薬を処方してくれます。
手入れの時、こいつだけは真っ先に見つけ、枝ごと取り除いてしまう。
消毒して死んでいても毛が刺されば同じこと。
だからといって強い消毒薬を散布するのは大間違い。
確かに毛虫は死ぬが、下手をすると植木もやられる。
それで立派な松を枯らしてしまった庭持ちを、幾人か知っている。
特に春先の新芽はとても柔らかく、消毒薬が強いと真っ先に茶色になる。
なので、きちんと薬品に表記されている量で危弱して使用する。
そして虫の時期に2回〜3回ほど散布するのがオススメ。
庭であれば植木だけでなく庭全体に散布する。
それを毎年やっていると、あまり虫がよってこなくなる。
これが一番の消毒方法であると思う。
消毒を癖にして、まず虫が寄るのを防ぐ。
そして散布した日は誘われても呑みには行かない(笑)
よくお客さんに、
「虫の付かない木を植えて欲しい」
と、言われる。
返答は決まって、そんな木はないと答える。
確かに防虫作用のある木もあるにはあるが、その木に付かないってだけで、庭全体として考えるならない。
植木の虫も、消毒と酒も、上手く付き合うしかないのだと思った、消毒の日々。
 
日々消毒。
 
かずあき