伝説の男

世界の頂点を極めたガッツ石松
『あんな人めったに居ないよ』と思っていました。
しかし、その伝説の男に勝るとも劣らない人物が居ました。
その人物は、以前勤めていた造園会社の兄弟子でした。
その時の噺。
 
時は遡って6年前。
自分が隣町の造園会社に入社したとき、3人の兄弟子が居ました。
その一番うえの兄にあたるのが『伝説の男』。
名前もスゴイ。
あの巌流島の決戦でかの佐々木小次郎を二刀流で倒したという宮本○蔵。
その名前が苗字という訳のわからない人。
つまり苗字が○蔵。
最初は名前かと思っていた。
苗字だなんて、変わってるなと思った。
その奇行は凄まじく、遅刻なんてなんとも思っていない。
早退だってへっちゃら。
それならさぞかし仕事ができるのだろうと思いきや、そうでもない(笑)
寧ろ、出来ない。
口だけは達者。
同じ植木を二人で手入れしたときの事。
大抵樹頭から手を入れていきます。
同じ高さから始まっているのに、オレが半分終わっても彼はまだ植木の頭をいじっている。
その間ずっと喋りっぱなし。
そんな伝説の男、○蔵さん。
ある日こんな事を言い出した。
 
伝説の男「おい、かずあきちょっといいか?」
 
オレ  「はい、なんスか?」
 
ダンプの運転席から声を掛けられた。
走って駆け寄る。弟弟子はつらい。
 
オレ  「なんスか?」
 
伝説の男「いや、つまんない事なんだけど。」
 
オレ  「はい。」
 
伝説の男「コレはアクセル。」と、ダンプのアクセルを指さす。
 
オレ  「はい。」
 
伝説の男「コレはブレーキ。」と、ダンプのブレーキを指さす。
 
オレ  「はい。」
 
伝説の男「じゃ、コレは?」と、ダンプのクラッチを指さしている。
 
オレ  「ハイ!?
 
最初、質問の意味が全く解らなかった。
 
オレ  「ク、クラッチ?」
 
伝説の男「へぇ〜。そうなんだ、ありがとう」
 
 
 
 
 
 
えええええ!?
 
 
 
 
 
今まで何だと思って踏んでたの!?
教習所で習ったじゃん!?
ってか、それ以前の問題じゃん!?
本気で言っていました。
♪伝説の男ぉ〜♪
 
その2
また別の日。
お昼に鏡を見ながらまた彼が呼ぶ。
 
伝説の男「おい、かずあき」
 
オレ  「はい、なんスか?」
 
伝説の男「鏡ってさ、右が左で左が右なんだよな?」
 
全く解らない(笑)
つまり彼は鏡に映るのと写真とでは左右が違うというような事を言いたかったらしい。
 
オレ  「ハイ(笑)」
 
伝説の男「ってことは今鏡で見てるおれはおれじゃないんだよね?」
 
オレ  「・・・そ、そうですね(テキトー」
 
伝説の男「そうだよな、もっといい男だもん、おれ」
 
 
 
 
いや、あんた・・・見てるままのブサイクですから!!
残 念!!(笑)
 
 
 
その3
またまた別の日。
やはりお昼休みの時の事。
その日は彼の過去の話になった。
 
伝説の男「昔はオレも悪かったんだよねぇ。」
 
兄弟子T「そうだったんスかぁ。(馬鹿にしているような感じ・笑)」
 
オレ  「へぇー、そうだったんスかぁ。(お世辞に聞こえなくもない・笑)」
 
兄弟子Tから聞いていたが、伝説の男は入ってきた弟弟子にはこの話を必ずするという。しかし、昔悪かったとか暴走していたという類の武勇伝ばかりでかなり面倒くさい話なんだそうだ。
筋金入りの暴走族だった兄弟子Tによると、どうやらその武勇伝は嘘らしい。
話の中にチラホラおかしなことがあるという。
実際聞くのは初めてだったので、少し伝説を聞いてやろうと思った。
 
伝説の男「昔はさぁ、ムラサキのゼファーってのは許しがでた奴しか乗れなかったんだよ。」
 
オレ  「そうなんスかぁ。(誰の許しだよ・笑)」
 
伝説の男「いや、走ったね。夜通し。こうやってアクセルでコールきってさぁ。」
 
と、あたかもバイクに乗っているかの如く手を動かす。
 
左 手を。(笑)
 
ええええ!?(笑)
コールっていうのはあの五月蝿い音をブンブカやるやつ。
普通、バイクのアクセルって、右手にあります。
あぁ、さすが伝説の男。輸入車乗ってたんだね。
そうそう、向こうの車は左ハンドルだしね。
バイクもやっぱりアクセル左なんだね。
 
 
 
 
 
 
 
 
ってバカ!!(パクリ)
 
居場所が無くなったと、オレに言い残して会社を辞めてしまった彼。
今でも語り継がれています(笑)
こんな人もいるんです、実際に。スゴい人だったなぁ、ある意味(笑)
伝説の男の伝説はまだまだあります。
それはまた後日。
こんな人にならないように、日々精進(笑)
 
かずあき